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2023.12.20

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)とは?種類・特徴・兆候を解説【チェックリスト付き】

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)とは

「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder(ASD)」)は「対人関係が苦手」「強いこだわりがある」などの特徴がある発達障がいの一つです。

厚生労働省の調査では、約100人に1人が「自閉スペクトラム症」であるといわれています。

また、日本国内では約100人に1人という割合ですが、アメリカでは10年前の統計で「88人に1人」だった「自閉スペクトラム症」の子どもの割合が、最近の統計では「36人に1人」になっています。

(参考)CDC「Data&Statistics on Autism Spectrum Disorder」
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html

10年間で約2倍に増加しており、日本だけの傾向ではないようです。

診断名については、2013年に「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」の出版を契機として発達障がいの名称の一部が変更になり「自閉症」「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」の診断名が一つに統合され「自閉スペクトラム症」に変更されています。

こちらの記事では「自閉スペクトラム症」の診断名で解説をさせていただきます

(参考)e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)なるのには原因があるのか?

自閉スペクトラム症は「先天性(生まれつき)の脳機能障がい」が原因であると考えられています。

自分たちの「育て方」や「しつけ」の問題ではないか、とお悩みの保護者の方がいらっしゃいますが、2004年12月に公布された「発達障害者支援法」において「発達障がいは(一部略)脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

(参考)発達障害者支援法(平成十六年十二月十日法律第百六十七号)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/1376867.htm

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)の種類

「自閉スペクトラム症」の種類について「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」の3つに分類して解説をさせていただきます。
(尚「高機能自閉症」は「広汎性発達障がい」に分類されていた障がい名です。)

それぞれに共通している症状があり、かつ、成長するにつれて発現する症状もあるため、明確に分類をするのは難しい部分があります。
(同じような症状であっても、医師によって診断名が異なる一因でもあります。)

共通点、相違点は、下記の表でご確認ください。

(参考)文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1396626.htm

自閉症

「対人関係が苦手」「強いこだわりがある」「言葉の発達の遅れ」があり、かつ「知的発達の遅れ」を伴うもの

高機能自閉症

「対人関係が苦手」「強いこだわりがある」「言葉の発達の遅れ」があり、「知的発達の遅れ」を伴わないもの

アスペルガー症候群

「対人関係が苦手」「強いこだわりがある」があり、かつ「言葉の発達の遅れ」「知的発達の遅れ」を伴わないもの

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)の特徴

「自閉スペクトラム症」の主な特徴を3つ解説させていただきます。

具体例として、よくみられる行動を記載させていただいておりますので、ご参照ください。

対人関係が苦手

「自閉スペクトラム症」は、他者に対する関心が弱く「相手の気持ち」や「現在の状況」といった「あいまいなこと」を理解するのが苦手な傾向があります。

《具体例》
・独り言が多い、人の言ったことをオウム返しにする
・自分の興味のある話題を話し続ける
・視線が合わない
・一人遊びが多く、ごっこ遊びを好まない
・手を振ってバイバイするときに、手のひらを自分に向ける(逆さバイバイ)

強いこだわりがある

何かを行うときに、方法や手順について「強いこだわり」があることも特徴の一つです。

一見、几帳面にみえますが、自分で決めたパターン通りに進められないとパニックを起こすなど、本人はもちろん、周りからのコントロールが難しいという特徴があります。

他には、電車や車、国旗など特定の物に強い興味を示し、熱中することで専門的な知識を蓄積していきます。

「●●博士タイプ」「学者タイプ」の子どもには、この特徴が強く出ています。

《具体例》
・同じ行動を繰り返す(手足をバタバタさせる、飛び跳ねるなど)
・方法や手順、物の並べ方などが、いつも同じでないと気が済まない
・興味を持ったものへの執着が強い(電車、車、国旗、食べ物、アニメなど)

言葉の発達の遅れ

最後に言葉の発達の遅れについて、ご説明させていただきます。

一般的には、1歳前後から言葉を話し始めることが多いと言われていますが、話し始めるタイミングが周りのお友達や兄姉と比べて遅い、また話し始めてから1語→2語→3語と単語の数が増えるものの、まとまった文章での会話が難しいという特徴があります。

また「聴覚障がい」が原因で言葉がうまく聞き取れず、会話がスムーズにできないという可能性もあります。

言葉の発達には個人差がありますので、気になる症状がみられたら医師への早めの相談が望ましいです。

《具体例》
・言葉を話さない
・2語、3語の言葉で会話をする
・使っている言葉の数(語彙)が少ない

その他

自閉スペクトラム症の主な特徴を3つ挙げさせていただきました。

その他の症状として「感覚過敏」「発達性協調運動障がい」についてご紹介させていただきます。

「感覚過敏」には、光や音、匂い、触感などに対して過剰に反応する「過敏性」、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)への刺激や痛みへの反応が薄い「鈍麻性」の2種類があります。

それぞれ、具体例をみていきましょう。

《具体例(過敏性)》
・太陽などまぶしい光が苦手
・サイレンやチャイムの音が聞こえると耳をふさぐ、大声を出して嫌がる
・食べ物のにおいが苦手
・抱っこや触れられることを嫌がる
・特定の素材の服について、肌ざわりを嫌がる
・上着のタグが肌に触れることを嫌がる

《具体例(鈍麻性)》
・音がしても反応しない
・熱いもの(冷たいもの)を触っても気が付かない
・ケガをしても痛みに気が付かない
・暑さ、寒さに気づきにくい

「発達性協調運動障がい」は、体の動かし方が不自然、運動がぎこちないなどの身体的な特徴があります。

《具体例(発達性協調運動障がい)》
・歩き始めるのが遅い
・箸やハサミなどを上手に使えない
・頻繁に物を落とす
・スポーツが苦手

自閉スペクトラム症の診断をされていても、上記すべての症状が発現するというわけではありません。

一部の症状だけが強く出るなど個人によって強弱があります。

また、症状が似ている他の発達障がい(「注意欠如・多動症(ADHD)」「学習障がい(LD)」)が併存している可能性もありますので、どのような場面でどの症状が発現されるかという情報を整理できていると、医師が判断をする際の助けとなります

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)のグレーゾーン(境界知能)って何?

「発達障がいグレーゾーン」という言葉をご存知でしょうか?

前述の自閉スペクトラム症の特徴に当てはまる行動がみられるものの、診断基準を満たさず、発達障がいとみなされない子どもたちを指して使われるようになった言葉です。

「発達障がいグレーゾーン」に該当する場合、私たち保護者としては診断を受けるべきかどうか悩むところです。

そこで、こちらの章では「知能指数(IQ)」を指標として、どのような場合が「知的障がい」と「平均的」の境界線(境界知能)にあたるのかについて、解説をしていきたいと思います。

合わせて、境界線(境界知能)にあたることで起きる問題点についても考えていきましょう。

知能指数(IQ)とは?

「知能指数(IQ)」とは、知能の水準あるいは発達の程度を測定した検査結果を表す数値のことを指します。
知能の大まかな判断基準とされると同時に、知的障がいなどの判断や支援に利用されています。

(参考)e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-040.html

境界線(境界知能)とは?

厚生労働省では「知的障がい」の基準を「知能指数(IQ)70以下」と定めています。
基準に該当し、かつ生活の困難さなどの状況を審査した上で「知的障がい」と認定されることになります。

(参考)知的障害児(者)基礎調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html

また、平均的な層を「知能指数(IQ)86〜115」と定めています。その狭間にあたる「知能指数(IQ)71〜85」の層が「境界知能」と呼ばれており、人口の約14%(約1,700万人)が該当すると言われています。

(画像引用)NHK WEB特集(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210730/k10013164861000.html

境界線(境界知能)の問題点

「知的障がい」の基準は超えているものの「平均的な層」の数値には満たない「知能指数(IQ)71〜85」までの「境界知能」の層(グレーゾーン)。

「境界知能」の層(グレーゾーン)に該当する場合の問題点はどのようなものがあるのでしょうか?

  1. 「境界知能」の層(グレーゾーン)であることに気づくまで時間が掛かる
  2. 周りからの理解が得られにくい
  3. 公的支援が適用されない

生活面や学習面での困難さを感じていながら「知的障がい」と認定された子どもと同様の配慮や公的支援を受けることができません。

例としては、特別支援学級での学習が必要な状況であっても通常学級に通っている、など教育現場での適切なサポートを受けることができていないケースがあります。

正確な診断を受けるには

ここからは、自閉スペクトラム症が疑われるときの問い合わせ窓口、医師の診断を受ける流れについて確認をしていきます。

まずは、お住いの市区町村の相談窓口やかかりつけ医などにご相談をしてください。

お子様の日常生活での悩み事や課題などをお話していただくことで、必要な支援についてのアドバイスを受けることができます。

【主な相談窓口】
・お住まいの市区町村窓口
・発達障がい者支援センター
・子育て家庭支援センター
・児童発達支援センター
・児童相談所
・かかりつけ医(小児科)

続いて、医療機関(小児科、児童精神科など)で医師や心理士の診察や検査を受ける流れをご説明させていただきます。

最初に医療機関を選ぶ際の3つのポイントをご紹介させていただきます。

  1. 発達障がいの対応をしている医療機関かどうか
  2. その医療機関で心理検査が行われているかどうか
  3. 心理士(公認心理士、または臨床心理士)が検査を行い、対応してくれるかどうか

以上、3つのポイントを確認しておくことをおすすめします。

①問診

お子様の出生時から現在までの成長の様子、日常生活で困っていることなどを話していただきます。
母子手帳を用意して、情報を整理しておくと良いでしょう。

具体的には、以下の内容を確認していきます。

【問診で確認する内容(例)】
・在胎週数
・出生時の体重
・運動発達の度合い
・言語発達
・赤ちゃんのときにお母さんとよく目が合ったか
・人見知りの強さ
・特定の物への興味関心
・大人の行動の模倣の有無

運動発達については、粗大運動(座る、立つ歩くなどの生活に必要な動作)、微細運動(手や指を使った細かく精密な動作)、巧緻性、協調運動(手と足、目や手など別々に動く機能をまとめて動かす運動)の発達具合を細かく確認していきます。

言語発達については、初語(はじめて言葉が出た時期)や言葉の出た順番などを確認して診断を行います。

②面接・行動観察

質問に答えられるお子様には、医師が面接で聞き取りを行います。

面接が難しい場合は、保護者や病院のスタッフと遊んでいる様子や親子の会話のやりとりなど自然な関わりを観察します。

③検査

心理士による「心理検査」「発達検査」「知能検査」などを行います。
心理検査は診断の補助的な検査になります。

検査を行うことで発達障がいかどうかが確実に分かるわけではありませんが、お子様の得意なところと苦手なところを把握することができます。これによってお子様への関わり方のコツが分かったり、環境調整のヒントが得られることがあります。

また、必要に応じて、医師による「脳波の検査」「血液検査」を実施する場合があります。
初診の診察だけでは、お子様の状況をすべて把握することは難しいため、一定期間(数カ月程度)通院をしていただき、経過観察を行います。

また、診断を確定するまでの間、療育(発達支援)を受けることを勧められる場合もありますので、医師と相談しながら療育(発達支援)を受ける施設についても検討をしていきましょう。

最後に、発達障がいの専門外来を設けている医療機関で受診をされる際の注意点について、ご説明をさせていただきます。

専門的な医療が受けられる一方、予約を取ってから受診までに数か月待ちになることもあるため、事前に医療機関の予約状況を確認をしておくと良いでしょう。
一例として、東京都が作成している「発達障がい者医療機関リスト」をご紹介させていただきます。

(参考)発達障がい者医療機関リスト(東京都)
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/hattatsushougai.files/200420-9.iryoukikan-list.pdf

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)の兆候やサインってあるの?

ご家族が日常生活の中で「もしかして、発達障がいかも?」と感じる兆候、サインとしてNCNP病院 (国立精神・神経医療研究センター)が挙げている例をご紹介させていただきます。

【自閉スペクトラム症の兆候、サイン】
・目と目が合わない
・にっこりと笑いかけても、微笑み返さない
・指さしが少ない
・他者のまねをすることが少ない
・言葉の発達の遅れ
・語彙が広がらない
・こだわりが強い
・感覚の過敏さがある

(参考)NCNP病院 自閉スペクトラム症(国立精神・神経医療研究センター)
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease06.html

また、普段一緒に生活していて距離が近いからこそ、家族が気付けないこともあります。

そのため、乳幼児健診(1歳半検診、3歳児検診)などのタイミングで、医師や看護師が気になる点を発見したり、保育園や幼稚園の先生が園内でのお友達や保育士とのやり取りの中で気が付いたりすることもあります。

「ご家族以外の目でどのように見えているか」を知ることは、発達障がいを早期発見するために有効な情報になり得ます。

自閉症(自閉スペクトラム症/ASD)のチェックリスト

前述の「自閉スペクトラム症の特徴」をまとめさせていただきましたので、チェックリストとしてご参照ください。

【チェックリスト】
・独り言が多い、人の言ったことをオウム返しにする
・自分の興味のある話題を話し続ける
・視線が合わない
・一人遊びが多く、ごっこ遊びを好まない
・手を振ってバイバイするときに、手のひらを自分に向ける(逆さバイバイ)
・同じ行動を繰り返す(手足をバタバタさせる、飛び跳ねるなど)
・方法や手順、物の並べ方がいつも同じでないと気が済まない
・興味を持ったものへの執着が強い(電車、食べ物、アニメなど)
・言葉を話さない
・2語、3語の言葉で会話をする
・使っている言葉の数(語彙)が少ない

尚、自閉スペクトラム症の特徴の出方には個人差があります。

正確な診断をするためには専門の医療機関において、面談や行動観察、検査結果などを基に総合的な判断をすることが重要になります。

こちらのチェックリストは、あくまでも参考としてご参照いただければと思います。

まとめ

冒頭でご紹介させていただいた通り、自閉スペクトラム症を含む発達障がいの症状がある子どもの人数は、全国的に増加傾向にあります。

40名学級の場合、2名〜3名は「特別な支援が必要とする児童生徒」に該当するという調査結果があり、発達障がいがより身近に感じられるようになってきているのではないでしょうか。

(参考)通級による指導実施状況調査結果(概要)文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20220905-mxt_tokubetu01-000023938-10.pdf

一方で「どのような支援があるのか分からない…」「どこに相談すればいいの?」と悩んでいる保護者の方も多くいらっしゃると思います。

お子様の成長に気になる点がある場合は、ご家族だけで悩まずにお気軽にお住いの市区町村窓口などにご相談いただければと思います。

本記事がみなさまの発達障がいに関する情報整理の一助になり、支援が必要な子どもたちの選択肢を広げる手助けになれば幸いです。

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