児童発達支援の利用をすすめられたけれど、実際にどんな支援をしてくれるのかいまいちわからない、具体的に子どもが通うイメージが持てないと悩んでいる保護者の方は少なくありません。
児童発達支援とは、おもに未就学児の子どもを対象に療育を行う通所型の障害福祉サービスのことです。ひとりひとり障害の特性に応じた支援が受けられます。
この記事では、児童発達支援の支援内容や1日の流れについてわかりやすく紹介します。
児童発達支援サービスの利用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
児童発達支援とは
児童発達支援とは、児童福祉法に基づいた、おもに未就学児の子ども(0歳~6歳まで)を対象に集団または個別の療育を行う通所型の障害福祉サービスです。
日常生活における基本的な動作や知識技術を習得するための指導や集団生活に適応するためのトレーニングを行います。
また、日本国内では約100人に1人という割合ですが、アメリカでは10年前の統計で「88人に1人」だった「自閉スペクトラム症」の子どもの割合が、最近の統計では「36人に1人」になっています。
以上のように少子化が進む中で、発達障がいと診断される子どもや、発達に偏りがあり、ご家庭や園での困り感のある子どもが増加しております。このような状況の中、児童発達支援は今後さらに必要性が出てくると思われます。
(参考)CDC「Data&Statistics on Autism Spectrum Disorder」
https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html
(参考)厚生労働省「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-005.html#:~:text=%E8%BF%91%E5%B9%B4%E3%80%81%E8%87%AA%E9%96%89%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%A0%E7%97%87,%E5%80%8D%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F%E9%A0%BB%E5%BA%A6%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
事業所では、ひとりひとりの障害の状態や特性に合わせて、きめ細やかなサポートを行います。
児童発達支援の支援内容
児童発達支援の支援内容は、発達支援(本人支援や移行支援)、家族支援、地域支援の大きく分けて3つあります。
これらの支援内容は、厚生労働省のガイドラインに定められており、その基準に沿って支援を行います。それぞれ具体的にどんな支援を行っているのか詳しくみていきましょう。
本人支援
まず1つ目は、本人支援です。障害のある本人が日常生活や社会生活をスムーズに営めるように指導や支援をします。
具体的には以下のような5つの領域について、それぞれ子どもの障害の状態や特性などに合わせてサポートします。
①健康・生活
着替えや食事、トイレ、片付けなど日常生活に必要な動作やスキルを身につけるためのトレーニングを行います。基本的な生活リズムを身につけられるように障害の特性や発達段階に合わせて必要なサポートを行います。
②運動・感覚
なわとびなど体を大きく動かす粗大運動や工作など細かく複雑な動きを行う微細運動を通して上手な身体の使い方を学びます。また、感覚が鋭かったり、逆に鈍かったりする子どもには環境調整することでサポートします。例えば、聴覚が鋭い子どもには、イヤーマフを装着することで過ごしやすくなります。
③認知・行動
色や形、数、大小などの基本的な概念を学びます。概念を理解することは難しいため、実際に操作したり、視覚的な支援をしたりして理解を促します。また、こだわりなどの認知の特性を理解したうえで、正しい行動がとれるようにサポートします。
④言語・コミュニケーション
有義語(意味のある言葉)や2語文(名詞と動詞を組み合わせた短い文)などの言葉を増やし、発語、発話を促します。言葉でのコミュニケーションだけでなく、絵カードや指差しなどその子どもに合ったコミュニケーション方法を提案し、他者と意思伝達ができるようになるためのサポートをします。
⑤人間関係・社会性
集団や小集団でゲームやソーシャルスキルトレーニングなどを行います。ルールや順番を守るなどの対人関係に必要なスキルを学び、集団活動に参加できるようにサポートします。
本人支援では、障害の特性に合わせてさまざまなプログラムを組み、幼稚園や小学校入学に向けて集団生活に適応できるように指導や支援をしていきます。
移行支援
次に移行支援です。移行支援は、発達支援のひとつに含まれます。
移行支援は、可能な限り、同年代の子どもと同じ保育や教育を受けられるように支援したり、同じ年代の子どもとの仲間づくりを支援したりします。
家族支援
そして、本人だけでなく、家族支援も大切な支援のひとつです。障害がある子どもの保護者が安心して育児を行えるように、抱えている悩みや負担を軽減するための支援をします。
例えば、家族支援では、以下のような支援を行います。
- 保護者面談
- 子どもの発達状況の共有や支援ニーズの確認
- 家族向けのペアレントトレーニング
- 子どもとの関わり方などに関する相談や助言
その他にも、必要に応じて、子どもを一時的に預けることで、保護者が休息をとるレスパイトとして利用することも可能です。
地域支援
最後に、地域支援です。障害のある子どもが通う保育所への訪問支援をしたり、医療機関や児童相談所などと連携して地域で保育が受けられるように支援したりします。
(参考)児童発達支援ガイドラインの概要(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171638.pdf
児童発達支援の種類
児童発達支援には、児童発達支援センターと児童発達支援事業所の2つの種類があります。
児童発達支援センター
児童発達支援センターは、各地域の中核的な支援機関の役割を担っています。そのため、障害のある子どもやその保護者への相談援助のほか、保育所等訪問支援なども行っています。
また、児童発達支援センターには、「福祉型」と「医療型」の2つがあります。
「福祉型」は、発達支援などの療育が受けられます。
「医療型」は、発達支援などの療育のほかに、医療的ケアや機能訓練といった医療的な支援が受けられます。そのため、「医療型」は上肢や下肢、体幹機能に障害がある肢体不自由児が対象です。
児童発達支援事業所
障害のある子どもや保護者への相談援助を行っています。児童発達支援センターより数多く設置されているため、通いやすく身近な存在といえます。
(参考)児童発達支援センターの位置づけについて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000791881.pdf
【事例】児童発達支援の1日の流れ・スケジュール <平日>
では、実際に児童発達支援での1日の流れについて紹介します。まずは、平日スケジュールの事例です。※教室の設備、プログラムやサービス内容、営業日は教室によって異なります。
▼こぱんはうすさくらの支援内容やスケジュールはコチラ
9:30〜 来所
教室に到着(送迎)
健康状態の確認、水分補給、トイレなど
荷物の整理、着替え、連絡帳の提出
・教室に到着したら、できる限り自分で行うように促します。普段は行えることも精神状態が落ち着かずにできないときは、スタッフに手伝ってもらいながら行うなど臨機応変にサポートします
・児童発達支援管理責任者などが、個別面談を行い、メンタルの安定を図ります。
・自由遊びの前に、はじめの会を行います。内容は、あいさつ、出席確認、お返事、1日のスケジュールの確認をします。はじめの会を行う目的は、今日一緒に過ごすお友達、今日は何をするのかを認識することで不安を解消したり、はじめと終わりを意識して行動できるようにしたりすることです。
10:05〜 自由遊び
・個別アセスメントに応じて、遊びの見つけ方、参加の促し、仲間に入れることなどを支援します。
・参加できない、何もできないなどの場面がないように関わります。
10:30〜 課題遊び
・個別支援計画に基づき、遊びや課題、活動内容を設定して行います。
・個々の目標や障害の特性に応じて、園や家庭での生活を送る上でのさまざまな課題にチャレンジします。
11:30〜 片付け、帰りの準備
・片付けや帰りの準備をとおして日常生活に必要なスキルを学びます。
12:00〜 帰宅
帰りの会、個別に送迎
・帰りの会では、あいさつ、次回の登所日確認、今日の振り返りなどを行います。
・帰りの会終了後、個別に送迎いたします。残られるお子さまには、個別にご支援および見守りも可能です。
【事例】児童発達支援の1日の流れ・スケジュール <休日>
次に休日の1日の過ごし方の事例を紹介します。
9:30〜 来所
教室に到着(送迎)
健康状態の確認、水分補給、トイレなど
荷物の整理、着替え、連絡帳の提出
・教室に到着したら、できる限り自分で行うように促します。普段は行えることも精神状態が落ち着かずにできないときは、スタッフに手伝ってもらいながら行うなど臨機応変にサポートします
・児童発達支援管理責任者などが、個別面談を行い、メンタルの安定を図ります。
・自由遊びの前に、はじめの会を行います。内容は、あいさつ、出席確認、お返事、1日のスケジュールの確認をします。はじめの会を行う目的は、今日一緒に過ごすお友達、今日は何をするのかを認識することで不安を解消したり、はじめと終わりを意識して行動できるようにしたりすることです。
10:15〜 合唱、自由遊び
・みんなで唄うことで、体と脳を起こします。また一体感を感じるように支援します。
・個別アセスメントに応じて、遊びの見つけ方、参加の促し、仲間に入れることなどを支援します。
・参加できない、何もできないなどの場面がないように関わります。
12:00〜 昼食
・持参いただいたお弁当のほか、お茶を用意したり、テーブルを用意したりするなど、社会性を基調に、みんなで食べることを理解できるように支援します。
・みんなでテーブルを囲み、みんなで食べることの楽しさを感じられるようにします。介助が必要なお子さまには支援します。
13:00〜 個別プログラム
・個別支援計画に基づき、遊びや課題、活動内容を設定して行います。
・個別の目標や障がいの特性に応じて、園や家庭での生活を送る上で必要なさまざまな課題にチャレンジします。
15:15〜 集団レクリエーション
・ゲームや調理などを通して、小さな集団の中での約束や、人と関わることの大切さ楽しさを学んでいきます。
・知育・療育・体育など複合的観点からプログラムします。
16:00〜 帰宅
帰りの会、個別に送迎
・帰りの会では、あいさつ、次回の登所日確認、今日の振り返りなどを行います。
・帰りの会終了後、個別に送迎いたします。残られるお子さまには、個別にご支援および見守りも可能です。
児童発達支援サービスのメリット・デメリット
メリット
児童発達支援サービスのメリットは、ひとりひとり障害の状態や特性に合わせて必要な支援が受けられることです。
当然、子どもによってつまずいていることや困り感はそれぞれ違います。児童発達支援サービスでは、その子どものニーズに合った支援を提案してくれます。
また、課題やプログラムは、遊びの要素を取り入れながら楽しく取り組めるように工夫されています。そのため、子どもたちも学習という意識をあまり持たずに楽しく取り組むことができるでしょう
それから児童発達支援に関わるスタッフは、保育士などの資格を持ち、専門の知識を兼ね備えています。保護者のなかには、障害のある子どもを育てるなかで直面する悩みなどをひとりで抱えこんでしまう人も少なくありません。
児童発達支援のスタッフに相談すれば、話を聞いてもらえたり具体的なアドバイスをもらえたりします。また、同じ児童発達支援に通う保護者同士のつながりもできますので、悩みを共有したり相談したりできる場が増えるでしょう。
児童発達支援を利用することで、子どもを預けている間、保護者も時間が取れるようになり精神的なゆとりが持てるのもメリットです。
デメリット
一方、児童発達支援サービスのデメリットは、通いたい施設が見つかっても空きがなくて入れなかったり、利用日数に上限があったりします。希望通りに通所できない場合もありますので注意が必要です。
また、施設によっては、送迎がない場合もあります。子どもがたくさんいる場合や施設の場所によっては、施設への送迎が負担になってしまうことも考えられます。施設の場所や送迎の有無は事前によく確認しておきましょう。
児童発達支援サービスの利用条件は?
児童発達支援サービスを利用できるのは、療育が必要だと自治体より認められた児童です。
療育が必要だと認められる場合には、乳幼児健診で療育を受けたほうがよいと判断された場合や保育所や幼稚園などに通っているが、あわせて専門的な療育を受けたほうがいいと判断された場合などが挙げられます。
療育の必要性が認められた場合、お住まいの自治体から通所受給者証が発行されます。
通所受給者証の発行には、まずお住まいの自治体への申請が必要です。通所受給者証を申請できる対象の児童については以下の通りです。
- 身体に障害がある児童
- 知的に障害がある児童
- 精神に障害がある児童(発達障害を含む)
- 障害総合支援法の対象となる難病の児童
通所受給者証の申請方法
通所受給者証を申請する方法について簡単に説明します。
通所受給者証の申請に必要な書類は、一般的に以下のような書類が必要です。
- 申請書
- 障害児支援利用計画案
- 医師の診断書または療育手帳など発達に支援が必要だとわかる書類
- 所得を証明する書類
- マイナンバー書類
必要な書類は自治体によって異なる場合もありますので、お住まいの自治体に確認してみるとよいでしょう。
障害児支援利用計画案ついては、相談支援事業所に依頼して作成してもらう方法と保護者がセルフプランというかたちで作成する方法があります。
相談支援事業所に作成を依頼したい場合には、お住まいの自治体に相談すれば紹介してくれます。障害児支援利用計画案の作成にかかる料金は、自治体負担となりますので、原則、利用者の負担はありません。 申請書類を提出すると審査が行われ、療育が必要だと判断された場合には、通所受給者証が発行されます。
(参考)児童福祉サービスの利用の流れ WAMNET独立行政法人福祉医療機構
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/jidou/handbook/flow/
児童発達支援の料金
通所受給者証を持っていれば、自治体が9割負担してくれるので、残りの1割を自己負担すればサービスを利用することができます。 また、自己負担の1割は、所得によって負担上限が定められています。
- 生活保護受給世帯で市町村民税が非課税 0円
- 前年度の年間所得が概ね920万円までの世帯:4,600円
- 前年度の年間所得が概ね920万円以上の世帯:37,200円
おやつ代などの食費や教材費などは別途実費でかかる場合があります。
(参考)障害者福祉:障害者の利用者負担(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan2.html
また、児童発達支援の負担軽減措置として以下の2つの制度があります。
ひとつは、多子軽減措置です。
児童発達支援を利用している子どもに、保育所や幼稚園、障害児通所施設に通う兄や姉がいる場合に、利用している子どもの利用料が軽減されます。
負担軽減の割合は、子どもの数により以下のように変わります。
- 利用する子どもが第2子の場合 5/100
- 利用する子どもが第3子の場合 無償
多子軽減措置を受けるには、自治体への申請が必要です。自治体独自の軽減措置がある場合もありますので、お住まいの障害福祉課などに確認してみてください。
もうひとつは、年齢によって障害のある子どもの利用者負担が無償化される制度です。
無償化の対象となる期間は、満3歳になった4月1日から原則3年間です。
幼稚園や保育所、認定こども園等と児童発達支援の両方を利用する場合は、両方とも無償化の対象となります。また、利用負担上限額や多子軽減措置の有無についても関係なく適用されます。ただし、食費や教材費等、実費で支払っている部分については適用されません。
こちらの制度については、特に申請等の手続きは必要ありません。
(参考)就学前の障害児の発達支援の無償化について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000520866.pdf
通所受給者証には、負担上限額や支給量(1か月で利用できる上限日数)が記載されています。人によって異なりますのでよく確認しましょう。
また、通所受給者証の有効期間は1年間です。更新すれば、継続して児童発達支援サービスを受けられます。
療育手帳を持っていない場合も利用できるのか?
児童発達支援サービスは、療育手帳を持っていなくても利用できます。
児童発達支援サービスを受けるためには、通所受給者証が必要です。しかし通所受給者証を発行してもらうための条件として療育手帳は必須とはなっていません。 子どもの発達に不安があり児童発達支援を受けたい場合には、医師や専門家の意見書など療育が必要だとわかる書類を添付することで、通所受給者証の申請をすることができます。
まとめ
児童発達支援とは、おもに未就学児の子どもを対象に集団または個別の療育を行う通所型の障害福祉サービスです。ひとりひとり障害の特性に応じて必要な支援を受けられます。
児童発達支援に通うと、さまざまなプログラムを通して日常生活や社会生活をスムーズに営むために必要な知識やスキルを身につけることができます。保護者にとっても、児童発達支援スタッフや同じ障害のある子どもをもつ保護者に悩みや不安を相談できる貴重な場になるでしょう。
もし、子どもの発達に不安を感じている場合には、児童発達支援サービスを利用してみてはいかがでしょうか?