2歳児の言葉の発達の目安
2歳ごろになると運動機能が発達し、よちよち歩きからしっかりと歩けるようになり、同時におしゃべりもできるようになっていきます。
言葉の発達では、0歳で「あー」「うー」などの喃語を話す段階から、1歳になると「おちゃ」「ワンワン」など意味のある言葉を話すようになり、2歳になる頃には2つの連続した単語を使う「二語文」で話す段階に進んでいきます。
たとえば「ママ、おちゃ」など、2つの言葉を組み合わせて自分の要求を伝えたり「これ、やだ」と拒否を示す場面も出てきます。
(参考)「子ども家庭総合評価表 記入の目安と一覧表(子ども家庭庁)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000348513.pdf
また、子ども家庭庁の調査によると、1歳6〜7カ月未満の乳幼児の90%以上が単語を話しているという統計結果があり、言語コミュニケーションが取れる子どもの割合は高くなることが分かります。
(参考)「乳幼児身体発達調査(こども家庭庁)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/73-22-01.pdf?oplid=88c74e5879.200a-ca01921-7e4f7ecc-18a5e87c259-1-2-1
2歳児の言葉の発達が遅い原因は?
言葉の発達に関わらず、子どもの成長には一定の目安があります。しかし、同じ月齢の子でも成長スピードには個人差があるため「お友達はできているのに……。」と周りの子どもの成長と比べて不安を感じるママ、パパは多いのではないでしょうか。
言葉を話し始めるタイミングが少し遅いことを過度に心配する必要はありません。しかしながら、原因が分からないことによって「育児方法が間違っているのではないか?」「もしかしたら、障がいがあるのではないか?」と余計に不安を感じることもあるでしょう。
そこで、この章では言葉の発達の遅れにはどのような原因が考えられるのか、5つに分けて説明していきます。
単純に言葉が出てくるまでに時間がかかる
言葉が出てくる準備としては、何が必要でしょうか?まずは、単語を覚える段階を踏む必要があります。
外国語の勉強に当てはめてみても、外国語が音として聞こえていても、単語の意味が分からないうちは聞き取ることが難しいように、言葉を理解するためには単語を覚えることが必要です。
子どもの脳は「見たもの、触ったもの」の名前を覚えることで、話す準備をしています。子どもが急に言葉を話すようになることを「言葉があふれてくる」と表現することがありますが、たくさんの単語を覚えることで言葉が脳にストックされ、ある時期から「あふれたように」言葉を話し始めるようになります。
言葉が出てきていない時期は「言葉を脳にストックしている状態」と考えることができます。
もともと性格がおとなしい
生まれつき性格が控えめで、一人でいることが好きな子どももいます。控えめな性格のため、自分から発言をする機会が少なく「言葉の発達が見えづらい」という側面があるかもしれません。
たとえば、周りの呼びかけに反応を示しており、伝えた内容を理解できた行動が取れているようであれば、言葉の理解が進んでいると言えるでしょう。このような場合は、過度に心配する必要はありません。
控えめで大人しい性格の場合「話せない」のではなく、必要以上に「話さない」だけ、という捉え方ができます。
環境などの要因
子どもの生活環境が言葉の習得に影響を及ぼしている可能性も考えられます。たとえば、家庭内で会話をする頻度が少ないことにより「言葉を聞く、または話す機会」を得にくく、言葉の習得に時間が掛かっていることが考えられます。
他には「過干渉」にも注意が必要です。
子どもが言葉で何かを伝えようとしたときに、周りにいる大人が先回りをして動いてしまうことがあります。一見すると気が利く行動に思えますが、結果的には子どもの発言を遮り、せっかくの言葉を発する練習の機会を奪うことにもなりかねません。
このような生活環境が、子どもが言葉の習得を遅れさせる遠因になることもありますので、注意が必要です。
・言葉に触れる体験が少ない
では、具体的に「言葉に触れる体験が少ない」とはどのような環境を指すのでしょうか。
たとえば、子どもの目の前に「りんご」が1つ置いてあるとしましょう。子どもはそれが「りんご」という名前だと知りません。大人から「これは、りんごっていうんだよ」と教えてもらうことによって目の前のものが「りんご」という名前だと理解します。つまり、説明して教えてあげる必要があるのです。
何度も繰り返し教えてあげることで、自分も大人の真似をして「りんご」と発するようになり、だんだんと上手に発音できるようになっていきます。このような「言葉の掛け合い」が少ないことが「言葉に触れる体験が少ない」状態の1つです。
たとえば、テレビ番組、YouTubeなどの受動型のコンテンツを視聴しているときは、ただ見ているだけではなく「りんごを食べてるね。おいしそうだね!」と「言葉の掛け合い」をすることが子どもの言葉の発達に役に立ちます。ぜひ、一緒にコミュニケーションを取りながら楽しんでみてください。
また、子どもと大人の会話だけではなく、大人同士の会話の量も言葉の習得に影響を与えます。子どもは大人同士の会話を見聞きすることでも、言葉をインプットしていくためです。子どもがママ、パパの口癖を真似しているところを見たことはありませんか?我が家でも「よく聞いてるなー」と感心してしまうことがあります。大人同士の会話の量が増えていくと子どもの語彙力を強化していくきっかけになります。
・言葉の理解が十分にできていない
前述の「りんご」の例のように、ものの名前と意味を結びつけることによって言葉を覚えます。「りんご」を指さして「これは、みかんだよ」と教えていたら間違えて覚えてしまいます。
動作についても同様で「りんご たべる」と話せるようになるためには「りんご」が食べ物であり「たべる」が食べ物を口に入れて飲み込む動作であることの理解が必要です。ものや動作を表すことばを正確に理解できていないことが原因で、言葉の発達がゆっくりに見えている可能性があります。
聴力に問題がある可能性
話しかけても反応がない、遅いと感じる場合には、聴力に問題がある可能性も考えられます。もし、子どもの耳の聞こえ方が気になる場合には、耳鼻科での検査をおすすめします。
なお、子どもの正面から声をかけた場合は、声を掛けられているのを目で確認した上で「ボク(ワタシ)が呼ばれてるのかな?」と判断して返事をしたり、近づいてくることがあります。聴力に問題がないか確認をする際は、子どもの背中側から声を掛けてみてください。
また、以下のチェックリストにある様子が見られる場合には、お早めに耳鼻科での検査をご検討ください。
重度の難聴は早い時期に気付かれることが多い一方で、中等度以下の難聴は気付かれづらく、結果的に発見が遅れるケースがあるため、注意が必要です。
【チェックリスト】
・呼びかけに応答しない
・大きな音がしても驚かない
・1歳までに、おしゃべりをしない
・2歳までに、意味のある単語を話さない
・何度も聞き返す
・テレビの音を必要以上に大きくする
幼児は自分で違和感に気付き、違和感があることを周囲に伝えることは難しいため、ママ、パパなど身近にいる方の気付きで早期発見・治療に繋げていきましょう。
(参考)「難聴を見逃さないために(日本耳鼻咽喉科学会)」
https://www.jibika.or.jp/uploads/files/committees/hearing_loss-you.pdf
脳の機能に原因がある可能性
先天的な発達障がいや知的障がいなど、脳の機能に原因があることも考えられます。前述の「聴力に問題がある可能性」の章で示させていただいたチェック項目に加えて、以下チェックリストの言動が見られるかどうかが一つの判断基準になります。
【チェックリスト】
・対人関係のコミュニケーションがうまく取れない
・こだわりが強い(限定的な行動、反復行動など)
・独り言が多い、人の話した言葉をオウム返しにする
・注意散漫(集中力が続かない)
・不注意(忘れ物、遅刻などをする)
・多動性(じっとしていられない)
・衝動性(思いつくと、すぐに行動してしまう)
2歳くらいの場合、発達途中の年齢のため医師が「障がいの症状である」と確定的な診断をすることが難しいこともあります。しかし、早期に診断を受けることによって、適切な支援に繋がることが期待できますので、気になる言動が見られる場合には早めのご相談をおすすめします。
(参考)「政策レポート 発達障害の理解のために(厚生労働省)」
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
発達障害かもしれないと思ったら
発達障がいの特徴についてご説明させていただきましたが、そもそも「発達障がい」とはどのようなものなのでしょうか。厚生労働省のホームページでは「発達障がいとは脳の機能的な問題が関係して生じる疾患であり、日常生活、社会生活、学業、職業上の機能障害が発達期に見られる状態をいう」と定義されています。
「脳機能の発達がアンバランスであるために、行動や態度に様々な特徴が現れる状態のこと」と表現する場合もあり、症状の一例としては「他者とのコミュニケーションが苦手」「落ち着きがない」「注意力が欠如している」などが挙げられます。
なお、主な発達障がいの種類は、以下4つに分類されています。①自閉スペクトラム症(ASD)の特徴の1つに「言葉の発達の遅れ」が含まれているため、ご紹介させていただきます。
①自閉スペクトラム症(ASD)
②注意欠如・多動症(ADHD)
③限局性学習症(SLD)、学習障害(LD)
④その他(発達性協調運動障がい、チック症)
もし、聴覚の問題に加えて「他者とのコミュニケーションが苦手」「落ち着きがない」「注意力が欠如している」などの発達障がいの症状がみられる場合には、専門家への相談をご検討ください。
2歳児の言葉の発達を促すためのポイント
ご家庭でできる言葉の発達のための取り組みをご紹介します。取り組みによってどのような効果があるのかご確認いただき、サポートをする際のご参考にしていただければ幸いです。
積極的に声をかける
言葉を習得するには、繰り返すことが大切です。たとえば、あいさつ。あいさつの言葉を覚えるために、毎日「おはよう」「こんにちは」「おやすみ」など声を掛けてみましょう。行動と言葉が繋がることで「起きたら、おはようって言う」など、言葉の意味を理解できるようになっていきます。
散歩をするときには「ワンワンが歩いてるね」「お花、かわいいね」など、見えているものと言葉を繋げてものの意味を教えていき、たくさんの言葉を掛けてあげてください。
また、大人とは違い、子どもの聴力は発達途中の状態です。早口で話されると正確に聞き取れないことがありますので、こどもが理解できているかを確認しながら、ゆっくりした口調、短い言葉で話しかけてあげるようにしましょう。
子供の動作に言葉を添える
先ほどのあいさつの覚え方と同じように、行動と言葉を連携させることで言葉への理解が深まっていきます。ごはんを食べるときには「いただきます」、食べ終わったときには「ごちそうさまでした」と言うことで「この行動をするときには、この言葉を使う」ことが理解できるようになり、適切な場面で正しい言葉を使えるようになります。
適切な場面で正しい言葉の使い方ができた時には「よくできたね、えらいね!」と褒めてあげましょう。成功体験を得ることで自信がつき、記憶に定着しやすくなります。
絵本を読み聞かせる/歌を歌って聞かせる
まだ字が読めない幼児にとって、絵本の読み聞かせは言葉の習得に適しています。絵を見ながらストーリーを聞くことで、絵本の登場人物を通した疑似体験ができますし、登場人物やものの名前を覚えるだけではなく、ストーリーを疑似体験することにより「嬉しい」「楽しい」「悲しい」「怖い」といった感情と言葉を連携して覚えることに役立ちます。
また、ページ数が少ない絵本であれば子どもが飽きづらく、ママ、パパも繰り返して読みやすい点もメリットの一つです。
絵本以外には手遊び歌や童謡など、音楽を使った遊びも言葉の習得に効果があります。歌であれば言葉の意味が分からなくても、リズムに乗って言葉を発する練習になりますし、さらに振り付けがある歌の場合には、体の動きと発語を一緒に行うことで言葉への理解が深まる効果も期待できます。
絵本の読み聞かせ、手遊び歌、童謡などの遊びを通して、楽しく覚える工夫をすると子どもの学習意欲が高まり、積極的に取り組めるようになります。
同年代の友達との交流の場を作る
子ども同士の関わりによって、言葉の発達が促進されることがあります。「生活環境が言葉の発達に影響を与える」ことを前述させていただきましたが、同年代の子どもと交流する環境にいることでお互いに刺激を受けられます。
たとえば、お友達の言葉や動きを観察し、真似をすることで言葉を覚えたり、一緒に遊ぶ中で「おもちゃを貸してもらいたい」などコミュニケーションを取ろうとすることによって言葉を話すきっかけになったりと触れ合うことが成長に繋がっていきます。
2歳児が喋らない時の相談先
ここまで「言葉の発達が遅い原因」と「発達を促すための対応方法」について、ご紹介させていただきました。ご家庭でさまざまな働きかけを行っても期待しているような改善が見られない、また、言葉の発達以外にも気になる言動があるという場合には、以下の機関に相談することができます。
・掛かりつけの小児科
・小児耳鼻科
・児童家庭支援センター(子ども家庭支援センター)
・保健センター
・児童発達支援センター
・児童相談所
・児童精神科
「もしかしたら聴覚障がいや発達障がいかもしれない?」と感じる症状が見られた場合は、相談窓口へのご連絡をご検討ください。
焦りは禁物。喋らない2歳児には個人差がある
いつも一緒に過ごしている家族だからこそ、子どもが何をしたがっているのかを雰囲気で察することができます。そのため、子どもの言葉を待たずに先回りしてしまうことはありませんでしょうか。ママ、パパが動いた方が早く済みますし、子どもにとっても楽な部分はあるでしょう。
仕事や家事で忙しい中で、毎回は難しくても時間的に余裕があるときには、深呼吸をして子どもの言葉を待ってあげるのはいかがでしょうか。ママやパパが話を聞いてくれる態勢になったとき、子どもが人に対して「もっと言葉で伝えたい!」という気持ちが育まれるきっかけになるかもしれません。
2歳ではあまりしゃべらなかった子が、周りの関わり方によって、3歳になったら急にしゃべり始めたという例もあります。子どものペースに合わせて、焦らずに見守って行くことも大切です。
一方で、言葉がうまく聞き取れないことは子どもにとって大きなストレスです。耳から情報のインプットできないことにより、学習意欲が下がってしまったり、お友達から話しかけられたときに「無視をされた」と誤解を受けたり、人間関係にも影響を与えてしまうこともあります。
繰り返しになりますが、聴覚の問題や発達障がいなどの可能性を心配される場合には、一人で悩みを抱えずに、お近くの相談窓口への連絡をご検討ください。