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2024.03.29

知的障害とは?特徴や症状について解説。発達障害との違いは何?

知的障害とは?

知的障害とは、おおむね18歳(発達期)までに認知や言語などに関わる知的機能に遅れが生じて、日常生活に特別な援助が必要な状態です。

知的障害と一言で言っても、人によって援助が必要な場面は異なります。軽い援助だけで日常生活を送れる人もいれば、常に援助が必要な人もいてその程度は様々です。知的障害が軽度の場合は、症状が軽いこともあり子どものころに気づかれることなく大人になってから、知的障害だと診断されるパターンもあります。

厚生労働省では知的障害の診断の基準を以下に定めています。
知的障害であると診断されるには2つの判断基準のどちらも当てはまる必要があります。

①知能機能の障害について:知能検査の結果、知能指数が70までのもの
②日常生活能力について:日常生活能力の到達水準が総合的に同年齢の日常生活能力水準(※1)の a, b, c, d のいずれかに該当するもの。

(※1)日常生活能力は4段階に分けられます。
a:常に全ての場面で介助が必要
b:常に多くの場面で介助が必要
c:時々、または一部で介助が必要
d:注意や配慮が必要

(参考)厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/101-1c.html

知的障害の診断では、
・アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)
・世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)
などの診断基準が使用されます。

このように診断基準も複数あるため、診断においては曖昧な部分があります。

知的障害という名前は医学的には「精神遅滞」「精神発達遅滞」と言われています。福祉領域では知的障害と言われているので本記事でも知的障害のまま説明します。

知的障害は完治するようなものではありません。もちろん支援により、出来ることが増えていくこともあるため、少ない援助で生活できるようになることもあります。しかし、障害の程度によっては常に支援が必要なこともあり、支援量は人によって様々です。

知的障害を持つ児童が日常生活を安全に送れるようにじっくり向き合う必要があるでしょう。

知的障害の人に接する際は以下のポイントを意識してみてください。

・本人の気持ちをしっかり把握し、本人の望む支援をおこなう
・絵や短い文を使用して分かりやすく話す
・応用が苦手のため、実際の日常生活動作に沿って支援していく
・今後起こりうる事を支援者が予測し、事前に予防できるように伝える
・集団生活をおこない、コミュニケーション能力を養う

知的障害は種類があるのか?

知的障害は大きく4つの種類に分けられます。知能水準(IQ)の程度と日常生活でどれだけ介助が必要かにより、程度が異なります。

知能水準(IQ)の検査で多く使用されるのは、ウェクスラー系知能検査です。医療機関や教育支援センター、児童発達支援センターなどで検査をすることができます。

年齢によって検査内容が異なり、以下の3種類があります。

・WPPSI:2歳6ヶ月~7歳3ヶ月の幼児用
・WISC:5歳0ヶ月~16歳11ヶ月までの児童用
・WAIS:16歳0カ月~90歳11カ月までの成人用

検査の内容は事前に知ってしまうと正しい診断結果が出ないため、公表されていません。

・知能水準の区分は以下の通りです。
Ⅰ:IQ20以下
Ⅱ:IQ21~35
Ⅲ:IQ36~50
Ⅳ:IQ51~70

知的障害の診断や区分について基準が定められていますが、曖昧な部分があり、地域によって判断基準が異なる場合があります。また、自閉症スペクトラム症(ASD)やADHD・抑うつなど他の障害も併せて持っていると症状の出方に個人差があるので判断が難しいです。

また、検査によって知的障害の程度が決定されますが、成長に伴って区分が変更となる場合もあります

例)
・3歳のころは中等度知的障害だったが、5歳に重度知的障害と診断された
・3歳のころは中等度知的障害だったが、5歳に軽度知的障害と診断された、など

知的障害の種類をそれぞれ説明するので参考にしてみてください。

軽度

軽度知的障害ではIQが50~70程度の知的障害があります。これは小学校高学年相当の知能です。

軽度知的障害の特徴は周りに気づかれにくいということです。日常生活はおおむね自分で行うことができますが、成長するにつれて学習面やコミュニケーション面・社会生活で困ることが目立ってきます。

生活していくうえで困難な出来事があっても性格のせいだと思われ、大人になってから知的障害であると診断される場合も少なくありません。怠けているなどと言われ、うつや不登校・無気力になってしまう人もいます。抑うつや自閉症スペクトラム症などが併発していると、その症状が目立って出ていることもあります。

学ぶ力や対応する力はあるため、日常で経験を積んでいくとできることが増える場合が多いです。軽度知的障害の場合は、早めに知的障害であることを発見し、早期対応が大切です。

乳幼児期は言葉の遅れが気になる方も多いでしょう。軽度知的障害の場合も、言葉の遅れや言葉を理解していないなどの特徴があります。軽度知的障害の場合は就学前に障害の有無を判断するのは難しいです。

乳幼児期は発語の程度に個人差があるため、言葉が遅いから知的障害があるとは言えません。気になる方は、1歳半健診や3歳健診にて保健師や医師に相談してみてください。

学童期では学習面での遅れが目立ってきます。小学校に入り、最初は何とかついていった勉強も学年が上がるにつれて理解するのが困難になり、ついていけなくなります。

知的障害と判定されるかどうかは、環境との影響が大きいです。保育園や幼稚園で課題がなくても、学校の環境によっては不適応を起こしてしまい、本人にとってとても辛い状況になる可能性もあります。

小学校に進学したのち、普通級のお子さんは特別支援級(8人までの少人数学級)への転級や、特別支援学級の中でも「知的障害級」は、知的障害の子どものための特別なカリキュラムを組んでいることが多くあります。

集団でのコミュニケーションが苦手で、空気が読めない・抽象的な指示が分からないなどの特徴がみられるでしょう。

大人になると仕事や日常生活で困難な場面があります。

中度

中度知的障害ではIQが35〜50程度の知的障害があります。これは小学校2~3年生相当の知能です。

日常生活は部分的に援助が必要で、完全に自分1人で生活することは困難だと言われています。

例えば、衣服の着脱はできるが服の選択は困難・入浴時洗い残しがあるなどがあります。運動能力に発達の遅れがみられる事も特徴です。

乳幼児期から発語の遅れが目立ち、学童期には授業の遅れやコミュニケーションの場面でトラブルが起こることがあります。

重度

重度知的障害ではIQが20〜34程度の知的障害があります。これは3~6歳相当の知能です。

言葉や運動能力の発達に遅れが見られます。身体全体の動きはできるが、指先を使うなどの動作が困難であり、日常生活の動作は1人ではできないため、多くの支援が必要です。

また、自分の清潔不潔に気を使うことが苦手・簡単な挨拶や受け答えはできるが応用が苦手・公共交通機関を使って1人で移動できないなどがあります。

最重度

最重度知的障害ではIQが20未満の知的障害があります。これは3歳未満に相当する知能です。

重度の身体的障害や視覚・聴覚の障害が現れる場合もあり、自分で身の回りのことができないのが特徴です。例えば、衣服の着脱が困難・排泄のタイミングがわからないなどです。てんかん発作を伴うこともあり、内服の管理などを介護者にしてもらう必要があるでしょう。

発語も難しい場合が多いですが、訓練にて簡単な単語であれば話せるようになる可能性もあります。また、人の指示が理解できずコミュニケーションも苦手です。

運動機能に障害が無い場合は、簡単な手伝いができることもあります。

知的障害の特徴

知的障害の特徴は程度によって異なりますし、一人ひとり症状の出方には個人差があります。ここで挙げられる特徴は数ある症状の1つにしか過ぎません。

しかし、知的障害の特徴を知っていると接し方も理解しやすくなります。よくある特徴を精神疾患の診断基準の1つである『DSM-5』の3つの領域に合わせて挙げてみました。

3つの領域とは概念的領域、社会的領域、実用的領域のことで、日常生活の適応能力をそれぞれ示しています。

・概念的領域
記憶、言語、読字、書字、数学的思考、実用的な知識の習得、問題解決、および新規場面における判断においての能力についての領域

・社会的領域
特に他者の思考・感情・および体験を認識すること、共感、対人的コミュニケーション技能、友情関係を築く能力、および社会的な判断についての領域

・実用的領域
特にセルフケア、仕事の責任、金銭管理、娯楽、行動の自己管理、および学校と仕事の課題の調整といった実生活での学習および自己管理についての領域

(参考)e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html

知的障害の特徴① 概念的領域

1つ目は概念的領域に関する特徴です。

概念的領域とは、記憶や言葉・読み書き・計算などが挙げられます。言葉が出ると言われる年齢を過ぎても話さないことで親が知的障害を疑うことが多いです。

軽度知的障害の場合は乳幼児期は知的障害であると気づかれず、小学校に通うようになって、授業についていけないなどの特徴が出てくることによって発見されます。

・発語が現れるのが遅い
・読み書きが苦手
・お釣りの計算ができない
・抽象的な考え方が難しい
・全体的に授業についていけない

知的障害の特徴② 社会的領域

2つ目は社会的領域に関する特徴です。

社会的領域とは、人とのコミュニケーション・相手が何を考えているかなどが挙げられます。

・空気が読めない発言や行動がある
・相手が何を考えているのか予想できない
・人とのコミュニケーションが苦手
・発語が無く、身振り手振りでコミュニケーションをとる
・指示が理解できず勉強や仕事を覚えるのが遅い
・複雑な指示が苦手
・文章を話すのが苦手で相手に伝えられない

知的障害の特徴③ 実用的領域

3つ目は実用的領域に関する特徴です。

実用的領域とは、主にセルフケア・公共交通機関の利用・健康の維持・リスク管理のことです。

・仕事や勉強のスケジュールが自分で立てられない
・日常生活に支援が必要
・自分の健康管理ができない
・安全かどうか理解できず支援が必要
・栄養を考えた食事が難しい
・自傷行為などをする人もおり、自分の安全に配慮した行動が難しい

知的障害の原因

知的障害の原因は様々です。本記事では、生理的要因・先天的要因に分けて説明します。

生理的要因

生理的要因とは基礎疾患が無いにもかかわらず知能や運動機能が発達しない場合に言われます。特に原因がはっきりしておらず、たまたま知能が低い状態です。

②先天的要因

先天的要因は生まれる前になんらかの原因があった場合に言われます。
主な原因としては、以下が挙げられます。

・妊娠中の母体の低栄養
・ダウン症などの染色体異常
・妊娠中の感染症
・出産時の事故による低酸素症
・妊娠中の中毒症
・早産や未熟児・新生児仮死

遺伝的要因も一部あると言われていますが、必ずしも知的障害が遺伝するとは言えません。

誰にでも起こる可能性はあり、遺伝性疾患は遺伝子や染色体が突然変異を起こし障害へと繋がる場合が多いです。そのため、遺伝を気にしすぎないようにしましょう。

先天性の代謝異常では、新生児スクリーニング検査により早く発見できる可能性があります。 発見が早い場合、投薬や食事療法による治療にて改善がみられる場合もあります。

知的障害と発達障害の違いは?

知的障害と発達障害は似ており、違いが分かりにくいです。精神疾患の判断基準であるDSM-5は、発達障害の中に知的障害が分類されるとしています。

発達障害は、脳の障害によるものであり、困り事が限定的で一部分のことが多いです。特定の機能の発達が遅れている状態であり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。

発達障害もいくつかに分けられます。

・自閉スペクトラム症注意欠如(ASD)
・注意欠如・多動症(ADHD)
・学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)など

知的障害は、全体的に知能が低く、日常生活動作にも困難が生じる状態です。療育手帳の交付対象となります。

例えば、知的障害は先生の言っていることが理解できず勉強についていけない、ということに対して、発達障害は話すことはできるが読むのが苦手など支援するべき点が異なります。

知的障害で、かつ発達障害である事も

それぞれ定義はありますが、知的障害と発達障害の両方が併存している場合もあります。

発達障害には発達障害の判断基準があり、知的障害の判断基準とは異なります。そのため、発達障害であり知的障害でもあると言われる人もいるでしょう。

その場合は、症状が混ざっており、人それぞれ支援する部分が異なるので一人ひとりに合わせた援助が大事です。

どちらの障害も持っている人もいて、知的障害や発達障害を分けて診断することは難しいですが、あえて診断をつけることで支援をしやすくする効果があります。

医学的な診断では分けて考えられますが、大切なのはその人が日常生活において何に困っているのかを明らかにすることです。

知的障害かもと思ったら

知的障害について説明してきましたが、特に乳幼児期の場合は成長に個人差も大きく、知的障害と判断するのは難しいです。

自分の子どもが知的障害かもしれないと思う時はどんなときでしょうか。以下にチェックポイントを記載しますので、参考にしてみてください。

・発語が遅い
・なかなか泣き止まない
・物事に集中しない
・目を合わせない
・抱っこを嫌がる
・思い通りにならないとパニックになる
・友達と喧嘩ばかりする
・友達と遊ばない
・学習の理解が困難で、習得できない
・物事への応用力がなく、柔軟に対応できない
・コミュニケーションが苦手
・気持ちや行動のコントロールが苦手
・日常生活動作(食事・入浴・排泄など)の自立に時間がかかる

これらのチェック項目が当てはまったからと言って必ず知的障害というわけではありません。知的障害とは診断されず、その子の特性によるもので成長とともに気にならなくなることもあります。

もしも、自分の子どもが知的障害かもしれないと思ったら、専門機関への相談がおすすめです。

早期の相談によって、早く支援を始めることができます。早期支援は子どもの出来ることを増やすことへと繋がります。環境が整えられ、生活もしやすくなるので家族が安心して暮らせるようになるでしょう。 抑うつなどの二次障害を防げるようになると言われています。

相談先は、かかりつけの小児科、児童発達支援センター、知的障害などの専門医などがあります。

ただし、最初から専門医へ行くのはハードルが高いため、まずは児童発達支援センターへ相談に行くのをおすすめします。

児童発達支援センターでは、専門医への紹介・診断までの支援・保育園や幼稚園・学校との連携・療育施設などの相談ができます。 知的障害かどうか、今後どのように行動したらいいのか不安な方は、相談だけでもしてみるといいでしょう。

まとめ

知的障害とは実年齢よりも大幅に知能が低く、程度によっては日常生活にて援助が必要な状態が18歳未満までに現れる障害です。

その特徴として、コミュニケーションが苦手・発語が遅い・日常生活の自立が困難・セルフケアが難しいなどが挙げられます。

早く知的障害に気づき適切な援助をすることで、日常生活が安定します。

不安を感じている方は、児童発達支援センターなどの専門機関に相談をして、関わり方や支援の方法を教えてもらいましょう。

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